心理的要素が含まれるゲームはスポーツ(バスケや野球などあらゆる競技)やボードゲーム(麻雀やポーカーなどもその一部)など数えだしたら切りがない。
その中でもメンタルのコントロールというのはスキルの1つであり、人狼にも当然応用が可能だということ。その事について複数回解説していきたい。
今回は基盤について触れて行こうと思う。感情の制御に関する話は②になりそう。
■1.メンタルをコントロールをする基盤
①学習レベル(ALM)
技術の習得度にはおよその段階があり、習得レベルが高ければ、メンタルに左右されない
②尺取虫
人には好不調の波が不規則に発生し、時にはスランプと呼ばれるものが発生する
③プロセス
ただ入村を繰り返すだけでは意味はなく、準備から分析まで、反省する必要がある
■2.学習レベル
(※諸説あるという点を予めご了承ください。説明するのに簡単なので採用してます)
・学習レベル1(無意識的無能)
自分が何を知らないかさえ知らない。しかし何も知らないからこそ幸せなのかも知れない。
・学習レベル2(意識的無能)
わかってるけども出来ない状態。自分に上手くなるために必要が事がわかった状態
・学習レベル3(意識的有能)
研鑽を積んで、身に付いた状態。唯一も問題点は意識しない出来ない事である。
・学習レベル4(無意識的有能)
意識せずとも自動的に行える状態。達人となりマスターしたと言える状態。
・学習レベル5
無意識に行える行動を、言語化し教える事ができる状態(※本によっては書いてたり書いてなかったりする)
メンタルゲームにおいては、学習レベル4以上の習得を目指す必要がある。後述するが、人狼ゲームでは疑われたり、現実で仕事に追われ、忙しい中に議論に時間を費やしたり、万全な精神状態で挑める時間の方が少ない。そんな環境では学習レベル3までのスキルというのは発揮できずに終わってしまう事もしばしば発生する。
精神面の未熟さで覚えて来た事が発揮できなくなるのではなく、技術が未熟だから精神面が万全じゃなくなった時に発揮できなくなるのである。これらを克服する最も重要な手段は地道に反復練習を繰り返すことで学習レベル4に到達することである。
幅広い知識を本を読んだだけでは、人狼ゲームで活かす事は困難。1つ1つ自ら体験して学習を定着させる必要がある(余談だが、学習の定着としてラーニングピラミッドを使用する事がある。読書より能動的な学習を重要としている。私も技術について高いレベルの人と議論したり討論をしている)
■3.染み付いた弱点
技術には負の側面もある。昔から持っている癖である。抱えてる弱点も慣れてしまえば、無意識に出してしまうものだ
学習レベル4ともなれば、「負ける達人」にもなってしまう。こうなると技術を1から意識して修正しなければならない。あまり上手ではない人から教わったり、あまり上手ではないプレイヤーと対戦し続ける事で「負ける達人」に到達してしまう訳だ。
ミスに最初に気が付いてれば、負ける達人にはならずに済む。もし負け癖が付いてしまったらかなり意識して一から弱点を克服する必要がある。
■4.冪(べき)乗則
諸説はありますが、スポーツなどで一万時間の法則(Outliers)など学習レベル4に到達するのにはそのくらいかかると言われています。
エクスペリエンス・カーブ(経験曲線効果)とも呼ばれるこの現象は、およそ冪乗則に近い値になることが経験則上多いから、冪乗で物事は上達するとも言われます。
これは10時間で物事を習得した場合、同じ量つまりは2倍上達するには、更に10時間を10回学習する必要があるという理論。
学習レベルに当てはめると
学習レベル1→レベル2(10時間)→レベル3(10時間×10時間=100時間)→レベル4(100時間×100時間=10000時間)
専門性のある技術を習得するのに、一万時間かかると言われる理由です。正確には技術の習得難易度にも差はあるでしょうし、この理屈だとレベル5になるのに1億時間(1万×1万)必要になってしまいますからね。(レベル3→4とレベル4→5の上達の量が同じかも定かではないですし)
とはいえ、スキルが上達するにつれ、更に上達するのが難しいという経験則はかなり感覚としては合う理屈になります。理屈はともかく
精神面が弱いから失敗するのではなく、技術が熟練ではないから精神面に左右されるのである。
■5.尺取虫
上達への過程は平坦ではない。
1回目から10回目のセッションより11回目から100回目の平均的な成績は上達していれば当然11回目~100回目の成績が良いだろう。しかし例えば3回目の成績は10回目より良かったり、21回目~30回目のセッションでは成績が悪かったり、過程で上振れや下振れといった尺取虫の形ような成績のずれ方が発生する。
この時に落とし穴に気を付けなければいけない。
運に左右されたり、自分にどうにもならない現象で成績を落とすからだ。この時に悪い原因を探してしまったり病んだりしてしまう。最悪の場合は取り組みを辞めてしまう。
大きく後退した。全く進歩がないと思う瞬間は必ず訪れるので、その時に尺取虫の存在を思い出す事。
プロのバスケット選手はシュートの練習を何万本も打つ事で成功率をあげているが、それでも外し続ける事があるのだ。このスランプは誰にも訪れる。好不調を繰り返しながら、少しずつ真ん中の部分が成長に向かってるのである。
■6.ABCゲーム
Aゲーム:ベストなプレイ
Bゲーム:堅実なプレイ
Cゲーム:最悪なプレイ
尺取虫の形から状態の良いベストなプレイが出来てる時がAゲーム、堅実なゲームをBゲーム、最悪なゲームをCゲームと表現している。
およその状態がBゲームの状態である。(5段階で表現すれば2~4がBゲームの状態。尺取虫の形のようにBゲームの状態が一番範囲が広い)しかし疑われたり、暴言を聞いたり目にしたりなどでパフォーマンスの低下。それ以外に疲れてたり、勉強してる範囲を使える要素が落ちてなかったり(あるいは見落としたり) 、あるいはちょっと集中できなかったりするだけでCゲームになってしまうし
逆になんでもない行動が周りに恵まれて間違った白視をしてくれる事で、自分の行動は何もかも村に利益を与えてると錯覚する事もあるだろう。(辛辣な表現だが、運とはそういうものである)自分のなんでもない発言が相手にクリティカルヒットして村を導いてるような錯覚さえ覚え、エピローグでは自慢げにその事について語ってるかも知れない。
そういった幸運に恵まれ、ゲームに集中しAゲームを実現出来てるかも知れない。
■7.長所と短所
進歩というのは2つの側面がある。「弱点の克服」と「長所の向上」である。
Aゲームの状態で発生するのは、「長所の向上」である。学習レベル3の技術が実践を体験したことでより学習レベル4に向かった事になるし、普段できなかった新しいスキルが精神的な余白によって(悩んでなくて、集中できる状態)学習レベルが低いスキルも使えるのでプレイの質はあがるだろう。
注意しなければならないのは、弱点は置き去りになったままである。実力の低い環境では間違ったまま勝ってしまったり通用する事もある訳だから、その場では勝てても「負けの達人」に向けて向上してしまったかも知れない。
そしてCゲームの時に発生するミスプレイを改善された訳ではないという事。相変わらずが周りの環境だったり調子が良くかみ合わないと、多くのスキルは発揮されない状態に逆戻りする訳である。
弱点を無視して学習する事は出来ず、CゲームではAゲームで出来てた事がCゲームでは出来なくなるという事が発生する。その出来事を分析することでCゲームで露見した「弱点を克服」することでCゲームの状態を進歩させる事が出来る。
■8.プロセスモデル
準備→実行→評価→分析→準備に戻って繰り返す。
PDCAサイクルなどのプロセスモデルに新しい知見はないが、これらを先程の学習レベルと尺取虫を当て嵌めて考えてみるようにすると良いだろう。
自分の調子はどうだったか?→(Aゲーム?Bゲーム?Cゲーム?)
調子が良い時悪い時に出来る事出来ない事。(学習レベルの確認)
習得する技術が正しい物か悪い癖ではないか?
自分の取り組みたい内容は実行できたか?
分析した内容を他の人と議論できてるか?
プロセスモデルを日常的に使う事でパフォーマンスを効率よく改善してくれる。長期間に渡って成長し続けるのには必要な取り組み方と言える。
■9.まとめ
今回の章はあくまで「基本はメンタルに左右されない強い技術力を持つべき」である。強い技術力とは反復練習を積み重ねて到達する技術力のことであり、スポーツ選手が毎日訓練を積む理由である。
よくプロ野球選手に揺さぶりやプレッシャーを与えろという話を聞くが、何万人の観客が見ててテレビに中継もされてるプロの選手は、多少のプレッシャーを与えたところで失策も殆どしないし、致命的なミスをする回数も殆ど変わらない。それだけの訓練をしているからプロなのである。
しかしそれでも致命的なミスや失策を犯してしまうのは、尺取虫の範囲(つまり不運だった)である事が多いのだ(もちろん不運と片付けられないのからプレッシャーをかけることに意味があるという思い込みが発生してしまう訳だが)
メンタルに左右されて下手になるのは、技術力が足りない(学習レベルが低い)という基盤を持つ事がメンタルゲーム①のテーマです。メンタルゲームとしては序章の話ですので、次回以降に感情にコントロールについて書きたいと思います。
...いつになるか、わからないけどね(筆が乗ったらね)ではまた、良いお年を
最終更新日:23/12/23